二章 刹那の一枚

11/12
前へ
/78ページ
次へ
『すみません、今日も付き合ってもらっちゃって……』  商店街までの道を二人で歩く途中、差し出されたメモ帳にはそう書いてあった。  なにも『……』まで書く必要はないような…… 「好きで付き合ってるんだから気にしないで」 「うん……ありがと」  頬を染めることはあっても、なかなか笑顔を見せることはない。  昨日笑顔を見せてくれた時の話題は確か…… 「家族……か」 「え?」 「あ、いや、なんでもない」  俺には両親がいない。  百合ちゃんも今は両親とは離れ離れ。  きっと俺は百合ちゃんに親近感を覚えている。  百合ちゃんに対しての気持ちはそういったもの。比泉の言うような、恋……とかではない、と思う。  百合ちゃんが俺を慕ってくれるのも、同じような理由なのだろう。  身内と言える裕二があんなだから、赤の他人である俺に『兄妹』という関係を求めたんだろうな……
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

873人が本棚に入れています
本棚に追加