四章 終幕、それは新たな始まり

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「でも……さ」  俺の考えに反論するかのように、薫が口を開く。  薫の方から積極的に話をするのは、実に珍しい。どうしたというのだろう。 「初めはそうでも、時間が経つに連れて変わっていくことだってあるだろ」 「そりゃ、そうかもしれないけど……」 「人間ってさ、ほんと些細なことで変わっちまうもんだからよ……」  その時の薫の表情は曇っていて、その様子はまるで自分もそうだったと言っているようだった。  人間は簡単に変わる。それは俺だって経験している。俺は、変われて良かったと思っているけど、薫はそうではないのだろうか。 「それに――」  俺が答えあぐねているのを見て、薫が続ける。 「なにも、兄妹や親子だけが『家族』じゃないだろ」 「まあ、親戚やペットも家族と呼べなくはないけど」 「いや、そうじゃなくて…………はあ、お前、バカだろ」  俺は今、酷く傷ついた。
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