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この生活も、明日で終わりか。
最初は無理やりな感じだったけど、気づけば俺自身この一週間を本当に楽しんでいた。
とはいえ、明日が終われば俺は風見家に戻り、美鶴や咲崎にからかわれることもなくなるだろう。
「あの……兄ちゃん」
コンコンというノックの音に続いて、ドアの向こうから聞こえてくる百合ちゃんの声。
「入っていいよ」
そう言うと、百合ちゃんはドアをゆっくりと開けて、そろりそろりと室内に入ってきた。
なんだかちょっと様子が変だ。
「兄ちゃん……明日って、ヒマ?」
「ん? まぁ、特に予定はないけど」
別に友達がいないわけじゃないぞ。
明日はたまたま、本当にたまたまヒマだっただけなんだから。
「なら……買い物に付き合ってほしいんやけど」
「お昼ご飯の? それなら全然――」
「そうじゃなくてっ、えと……ほら、もうすぐ冬だし……上着とか」
「ああ、洋服ね。うん、もちろん構わないよ」
「ほんまに!? じゃ、じゃあ約束したからっ!」
それだけ言うと、百合ちゃんはなぜか駆け足で帰って行った。
……あー、よく考えたらこれって、なんかデートみたいだな。
それで百合ちゃんも恥ずかしかったのかもしれない。
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