四章 終幕、それは新たな始まり

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 翌日、土曜日は休日なので、今日は午前中から百合ちゃんの買い物に付き合うことになっている。  今日の夜には久世家の両親も帰ってくるので、この買い物が終わり次第、俺は風見家に帰ることになるだろう。  そんなことを考えながら、玄関先で百合ちゃんの準備が終わるのを待っていると、不意にポケットに入っている携帯が震えだした。  メール、姉ちゃんからだ。 『久しぶりに帰ってくるんだから、土産の一つでも買ってきなさいよ』  顔文字の一つもない、女らしさの欠片も見当たらない淡泊なメール。  ただ家に帰るだけなのに土産よこせなんて言ってくるところは姉ちゃんらしいけど、俺が帰る日を覚えていたことにはビックリだ。  …………そこまで土産が欲しいのか。仕方ない、百合ちゃんの買い物に付き合う合間に適当に見繕いますか。 「お、お待たせしましたっ」  考え事をしているうちに、なぜかずいぶんとかしこまった様子で百合ちゃん登場。  買い物に付き合うように言われたのは俺の方だけど、これはこっちでリードしてあげた方が良さそうだ。
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