序章 激変する生活

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 悪いと思いながらも部屋の中をしばらく物色していると、その部屋にコンコンというノックの音が響き渡った。 「どうぞー」 「お邪魔します……」  入ってきたのは事情があってこの家に居候している裕二の従姉妹、久世百合ちゃん。  自分の部屋でもないのにお邪魔しますとか言われるとちょっぴり照れくさい。  百合ちゃんは関西のほうの出身で、標準語で喋ろうとはしているみたいだけど、ところどころ言葉に方言が混ざる。  まあ、俺はそれも個性の一つとして捉えているけど、百合ちゃん自身はどうしても完全な標準語を習得したいみたいだ。  容姿の特徴としては、とにかく身長が小さい。  同年代で千秋より小さい子を俺は初めて見た。  長めの茶髪は地毛らしく、それをサイドで一つにまとめている。 「兄ちゃん、ここに泊まるってほんとだったんだ……」 「うん、迷惑かな?」  そう聞くと、百合ちゃんはとんでもないというように首を横に振る。 「裕二と二人なんてありえへんと思ってたから……嬉しい」 「あはは、裕二もとことん嫌われてるね」  百合ちゃんは俺達より年が一つ下なのだけれど、呼び捨てにされていることからわかるように裕二に対しては遠慮がない。  これは裕二の自業自得だから、仕方のないことではあるな。
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