手紙と許婚

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美咲は一つ大きな深呼吸をすると話し始めた。 「私の居た孤児院には、私を含めて十人の子供達がいました。 私の一つ上に二人……お兄ちゃんとお姉ちゃんがいて。 下には中学生が三人、小学生が四人いました」 美咲はどこか遠くを見ていた…………ような気がした。 「みんな明るくて……みんな家族みたいでした。 院長先生はすごく優しくて、絶対怒ったりしない人でした。 私のお父さんのような存在です」 一言一言、何かを思い出しながら話しているみたいだ。 「でも……院長先生の奥さんが、怒るとものすごく怖くて。 ふふっ……怒られると院長先生も正座させられるんです」 楽しそうに笑みをこぼした。 「怒られた後は、決まって院長先生の部屋でお菓子を食べるんです。 みんな、それを目当てにわざと怒られたりもしました」 「ははっ、面白い所だな」 美咲は嬉しそうに頷いた。 「はい、ずっと居てもいいと思えるくらいに。 …………あっ! で、でも……憂さんの所に来てよかったって思ってますよ!」 少し慌ててるのも、なんか……可愛いな。 「憂さん、変な顔で笑ってますけど…………大丈夫ですか?」 俺が一人でにやけていると、美咲が心配してくれた。 「……ん? あ、あぁー大丈夫だよ。 ちょっと堪能してただけだよ」 美咲が首を傾げる。 「堪能……ですか? 何を堪能してたんですか?」
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