1611人が本棚に入れています
本棚に追加
/80ページ
美咲は一つ大きな深呼吸をすると話し始めた。
「私の居た孤児院には、私を含めて十人の子供達がいました。
私の一つ上に二人……お兄ちゃんとお姉ちゃんがいて。
下には中学生が三人、小学生が四人いました」
美咲はどこか遠くを見ていた…………ような気がした。
「みんな明るくて……みんな家族みたいでした。
院長先生はすごく優しくて、絶対怒ったりしない人でした。
私のお父さんのような存在です」
一言一言、何かを思い出しながら話しているみたいだ。
「でも……院長先生の奥さんが、怒るとものすごく怖くて。
ふふっ……怒られると院長先生も正座させられるんです」
楽しそうに笑みをこぼした。
「怒られた後は、決まって院長先生の部屋でお菓子を食べるんです。
みんな、それを目当てにわざと怒られたりもしました」
「ははっ、面白い所だな」
美咲は嬉しそうに頷いた。
「はい、ずっと居てもいいと思えるくらいに。
…………あっ!
で、でも……憂さんの所に来てよかったって思ってますよ!」
少し慌ててるのも、なんか……可愛いな。
「憂さん、変な顔で笑ってますけど…………大丈夫ですか?」
俺が一人でにやけていると、美咲が心配してくれた。
「……ん?
あ、あぁー大丈夫だよ。
ちょっと堪能してただけだよ」
美咲が首を傾げる。
「堪能……ですか?
何を堪能してたんですか?」
最初のコメントを投稿しよう!