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「さぁ、もう帰ってくれ」
美咲をぐいぐいとドアヘと引っ張っていく。
「ち、ちょっと……憂さん」
美咲は俺の手を振りほどこうと頑張っていた。
必死に抵抗しているんだろうが、全く抵抗になってない。
とうとうドアの前まで来ると、美咲は座り込んでしまった。
「憂さん……いやです。
出ていきたくない……」
美咲は俯いて声を震わせた。
まさか……泣いてんのか?
「……グズッ……いやです……絶対……ヒック……もう、一人は……」
勘弁してくれよぉ……完全に俺、悪役じゃん。
「わかった!
もうわかったから、泣かないでくれ」
しゃあないなぁ……
「家には居ていいから、泣かないでくれ」
俺は必死で美咲が泣き止む方法を考えていた。
「……ほ、ホントですか?
ホントに居てもいいんですか?」
顔を上げた美咲は……泣いてなかった。
「おまっ……嘘泣きか!」
「はい、お母様が乱暴されたら嘘でもいいから、泣けばいいって言ったので」
なるほど、母さんの入れ知恵か……
「憂さん?」
美咲がにっこり笑って俺を見上げた。
「男に二言はありませんよね?」
くっ……完全にやられた。
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