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 仮面を着用したスタッフの手により、がちゃりと南京錠が外されて鳥かごの扉が開けられた。  『お愛想回り』の時間だ。  カフがいちばん嫌いな時間でもある。 ――どうせ開けるのが分かってるんだから、わざわざ南京錠なんかつけなくてもいいのに。  水を得た魚のようにアンリたちがひらひら飛び出していき、くだらない演出に辟易しながら、それに続いてカフもホールに出た。  二人くっついてるとまとめて買われてしまうかもしれないため、セブランとはここで別れる。……いくら友達だとは言え、お互い仕事してるトコ見られるなんてありえない。  中央のテーブルは回避して、ぽつぽつと置かれている円卓を迂回しながらなるべく端っこのほうに行く。末席にいるお客さんのほうが、こういう遊びに慣れてなくて、かつ上司につれて来て貰っただけの可能性が高い。一見さんのほうが、後々何かとラクなのだ。  どのテーブルにしようか迷っていると、 「った……!」  どん、と思い切りぶつかられて、自然と近くにあった席のほうへふらふらとよろけていってしまった。 ――何だよ、もう!  むっとして肩越しに振り返ると、足早にテーブルの間をすり抜けていくアンリの背中が見えた。 ――何か一言ぐらい言えよ!  アンリに対してそれは無理な要求だとは分かっているが気分が悪い。ぷぅ、と膨らませたカフの頬が横合いから突き出された指でしぼまされた。まぬけな音を立てて、唇の間から空気が漏れる。 「今日のお相手は君なのかね? いやあ、私は慣れてそうなのより君みたいな子のほうが好みでね。やはり隅の席を取るに限る」  一方的にまくし立てながら、ガイコツかと見紛うほどガリガリの男がぐへへと下品に笑った。着られてる感じのだぼだぼの軍服がかわいそうだ。 ――しまったー!  こういうやつもいるから、慎重に選ぼうとしてたのに! アンリのせいで台無しだ。 「いやえっと……」 ――間違えましたごめんなさい、で許して……くれるわけないよなやっぱり。 「ほらほら、遠慮しないで。それとも膝に座るかい?」  棒切れみたいな膝を叩いて男がカフを急かす。 ――ほんとに乗ったらアンタ骨折しそうだよ……。  刺さりそうなほど尖った顎をぐいぐい近づけてどうにかその気にさせようとしてくる男をどうやって退けようか、愛想笑いを浮かべた顔が引きつる。ていうか酒くさっ!
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