04

6/6
前へ
/29ページ
次へ
「うん……でも、ごめん。セブランもだけど、皆に迷惑かけちゃって」 「皆って? リックとユーリ?」 「ええと……今朝ね、ティにも心配かけちゃったんだ」  心配して個室に様子を見に来てくれたことを説明すると、セブランが急に体を離した。 「ふぅん。あいつがねぇ」  しまったと思ったカフから、複雑な表情で目を逸らしている。やっぱりどこかフキゲンそうだ。  『特別』なティのことを口にすると、お店のコたちは総じてあんまりいい顔はしない。セブランもその一人であったことを忘れて、ついぽろりと言ってしまった。 ――一応はこのお店に属しているはずなのに、客を取らされることもなく、自分たちの苦労がまるでわからないようなあの出で立ち。加えて、広い部屋に一人で住んで大勢のお供を引き連れ、好きなように施設内を闊歩できる恵まれた環境。病弱だから、だけでは説明がつかない不公平すぎる待遇の良さ。直接ティと接する機会なんて滅多にあるようなものじゃないけど、こういった情報だけでも十分、少年たちの反感を買ってしまっているようだった。 「でも、ティはいい子だよ」  ぽそりと遠慮がちにカフが言うと、きっ、とセブランに睨まれてしまった。 「もう、カフのお人よしっ」 「ほんとに『いい子』なら、ただ見に来るだけじゃなくて後片付け手伝ったり、部屋まで連れてきてあげたりとかもっと色々するべきことあるじゃん!」  いつもよりきつい口調で言われ、カフは少し悲しい顔をした。どうして皆分かってくれないんだろう。  その表情を勘違いしたのか、 「あ……別に、僕がカフを介抱したから恩着せようとか、そういうんじゃなくて……」  とセブランが慌てて付け足した。その様子にカフはくすっと笑う。 「思ってないよ。でもいつもありがと、セブラン」  宥めるように礼を述べると、セブランはムズ痒そうにはにかんで見せた。こういう瞬間、ああ、そういえばセブランは俺より少し年下だったな、とカフは感じずにはいられない。小動物めいた仕草が可愛らしいのだ。  何かあったら壁蹴って呼んでね、と言い残してセブランが部屋を出て行った。それに力なく手を振って応えると、束の間の安息を味わうようにカフは眠りに就いた。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加