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懐の上から、「それ」を守るようにぎゅっと握り締め、相手を睨み据える。
「な、何だってんだ。お、俺は何も……」
「それをこちらに渡せ」
その言葉を遮り、人影が口を開いた。低くよく通る声色だが、その響きはまだ若い。
「ふ、ざけんな! お断りだね」
「……そうか」
唾を散らしながら後ずさると、追跡者はあっさり頷いた。呆気にとられる男の視界から、その姿が、ふ、と掻き消える。
「な……」
頭上に、影が広がった。
ふわりと広がった黒い外套の裾が視界を奪う。
見開いた男の瞳が最期に捉えたのは、自分の首元へ煌めきながら迫る、銀色の太刀筋だった。
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