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 女王様気取り(もちろん自分と同じ男なんだけど、気質は王様っていうより女王様っぽい)のアンリに一度目をつけられたら、何をされるかわかったもんじゃない。  カフの緊張を馬鹿にするかのように、アンリは「ふん」と鼻で笑い……肩に垂れている悔しいけど珍しくて綺麗な色の髪の毛を、わざわざこれみよがしに払って見せてから前を向いた。 ――よかった、機嫌損ねたわけじゃない。  横にいるセブランが、心配するようにカフを見ていた。  だいじょうぶ、と声は出さずに口だけ動かして、自分も銀色の細い格子ごしに見える客間のほうに向き直った。  ドーム状に高くくり抜かれた天井から滑稽なほど豪華なシャンデリアがぶら下がっているが、あれ自体に照明効果はないらしい。代わりに、二重になっている壁の隙間から零れている桃色掛かった光が周囲に反射して、間接的にホール全体を柔らかく照らし出している。  「あれは僕たちの肌をいちばん綺麗に見せるための工夫なんだってー」とセブランが教えてくれたことがあったっけ。  気付けば、あっちこっちでぽつぽつ聞こえていたひそひそ話が完全に収まっていた。お立ち台は水を打ったように静まり返り、周りはみんな佇まいを正していた。 ――ああ、「ご来場」か。  少し嫌悪感をにじまながら、カフもホールの反対側に設えられている両開きの重たそうな扉に顔を向けた。  最初だけぎぎ、と軋んだ音を立ててから、すう、とすべるように扉が開かれた。まず普段とは違う黒い服に身を包んだ神官たちが扉の動きを追って左右に並び、一斉に礼をした。カフたちもそれに習って、銀格子の向こうでお辞儀する。  「ユウレンへようこそいらっしゃいました。楽しいひと時を、お過ごし下さいませ」  お決まりの台詞を、変声期を迎える前の独特の少年たちの声が読み上げ……客たちがそれに合わせてホールの中へと導きいれられた。
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