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高層マンションの屋上には、金網ひとつなかった。
だから飛ぶにはもってこいの場所だった。
「すいません!!」
25階立てのマンションのエレベータを乗っている間は、今このときあの人影が飛んでしまわないか、気が気でなかった。
しかし屋上の扉を開いてそこへ出たとき、人影――否、ポニーテールの人はまだ飛んではいなかった。
彼女が声をあげて人を呼ぶと、人は振り返った。
青い髪を、赤い髪紐で結んだ、驚くことに酷く美しい少年だった。
少年は彼女を見て黙り込んでいた。
返事もしない。
ただ虚ろな目で彼女を見つめていた。
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