理想の妻

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「最近、よく飲みに行くだろ?奥さんが、帰りが遅いってうるさいんだよな。」 「あ、うちもだ。浮気してるわけじゃないのに、疑われて。」 同僚同士での飲み会。仕事も黙々とこなし、普段からあまり喋らない男が珍しく一緒にいた。 「うちは違いますよ。どんなに遅くなっても文句言いません。」 結婚していたことも知らなかったから、同僚達は驚いた。 「いい、奥さんだなぁ。今度会わせてくれよ。」 そんな具合に話が進み、次の休みに遊びに行くことになった。 駅で男と別れた同僚達は、不意に女性から声をかけられた。 「あの、すみません。」 女性は不安そうに話す。男の知り合いだという。彼の様子を教えてくれ、と。 同僚達は、酒の勢いもあって快く話した。今度、男の家に行き、妻に会わせてもらう話をすると、女性は眉間に皺を寄せた。 「再婚したんだ。」 呟くと、我にかえって礼を述べ去って行った。
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