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親友は、会社の同僚に、男の妻から聞いた話を聞かせた。
「男は、作家でな。それなりに売れてはいるが、最近スランプ状態ってやつで、書けなかったんだ。
おまけに荒れていて、俺と飲んでいても、常に機嫌が悪かった。
ところが、昨夜はやけに機嫌良くて、な。奥さんに電話してみたのさ。
そうしたら、クスクス笑いながら、主人には内緒で、と話してくれた。」
「どんな話だい?」
「男が書けなくなり、荒れていたことに、奥さんも心を痛めてな。気分転換を勧めたが、男は乗り気じゃない。
ならばせめて公園にでも散歩に行こう、と強引に誘った。奥さんと共に公園に行き、ベンチへひょい、と座ったら新聞が無造作に置かれていた。
作家の性分なのか、どんな新聞でも必ず、目を通す。もちろん、ベンチの新聞にも目を通した。そこへ、宝くじの当選番号が載っていた。男は、いつも宝くじを買っていたから、番号を確認してみた。
するとどうだろう。今まで当たったことがなかったのに、10万円が当たった。嬉しくて、公園の側にあった宝くじ売り場で換金した。
それがきっかけになって、小説の創作意欲が溢れて書き始めたそうだ。」
「へえ、偶然って凄いな。」
「偶然ならな。
実はそうじゃなかったのさ。」
「どういうことだい?」
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