それぞれの思惑

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窓のない部屋。自然の光が一つも差さない部屋で自己主張するのは部屋のところどころに設置されたコンピュータの人工の光。そしてその無数のコンピュータから生えているケーブルの集約点、部屋の真ん中にある円柱型の羊水入りのガラスの中で時折漏れる気泡のみ。 ガラスの中には逆さまで誰かがいる。男性とも女性とも老人とも赤子とも成人とも子供ともとれる。 「人間」アレイスター・クロウリー アレイスターはゆっくりと目を開ける。 「虚構の物語が創られたか。」 アレイスターは知っている。ここが真実でない事を。限りなく似せられているがそこに別の誰かの意思がある事を。それでも、 「いいだろう。」 アレイスターは笑う。男性とも女性とも老人とも赤子とも成人とも子供ともとれる声で呟く。 「やってみせよ虚構を創りし者。それが我が計画(プラン)の妨げにならねば私が否定する理由もない。」 アレイスターには一つの計画がある。それはまだ誰にも分からない。が、それを邪魔されなければこの物語も幕が開く。あるいはこの物語さえも彼の手の平の中なのだろうか。 全てを知る彼はもう何も語らない。
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