87人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
少女は荒れた平地の岩陰で悩んでいた。
最大教主(アークビショップ)の元から「アレ」を盗みだしてから数日。最大教主は意外と手回しが早く、すぐに追手がやって来た。
一応それなりの実力はあると自負しているがやはり命がけの追いかけっこというのは神経を削る。
(どうしよっかなー。)
岩陰から様子をうかがう。見たところは誰もいないが油断は出来ない。彼らと出会ってから数日は経っているがまだ彼らの魔術について分かりかねているのだから。
(あー、最近全然お風呂入ってないかな。)
まだ年頃の少女だ。そこは気になるのだろう。少女自慢の金髪も今は汚れて見る影もない。
(……ん?)
そんな事を考えると向こうから人影が二つ迫る。
(奴ら…かな。)
気構えたがその人影は少女の頭上を通り抜ける。見えたのは男女のペア。
男は赤い長髪をした神父姿。口に何かをくわえているがあれは煙草ではなく木の枝かなんかだと思いたい。
女はポニーテールの黒髪で白いシャツが胸の下辺りでふくらんでいて、そこから下は生身だ。おそらくヘソの辺りの部分を胸の下で縛っているのだろう。左右で長さの違うジーパンを履いていて背中には長刀をさしている。
(あれはイギリス清教の魔術師…だったかな。私を追ってきた…わけじゃなさそうかな。)
少女は二人の向かう先を見る。一面を壁に覆われたドーム状の街がある。
科学サイドの総本山「学園都市」
少女はそれを見て小さな笑みを浮かべる。
(魔術師が普通の手段で科学サイドの街に入るなんて考えられないっかなー。つまりあいつらは普通じゃない手段で街に入るかな。便乗させてもらいますかな、お二人さん。)
少女は二人の後をこっそりついていくのだった。
最初のコメントを投稿しよう!