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崎本へと視線を向けていたその僅かな油断が、敵に隙を見せてしまった。
それを狙っていたかのように、男が一人俺の頬に殴りかかってくる。
(――っしまった…っ)
そう思い気付いた時にはもう時既に遅し。顔を反らし避けようと試みるが、間に合う筈もなく鋭い痛みと共に地面に叩きつけられる。
「――ってぇ…っ」
地面へと叩きつけられ、頭にも鋭い衝撃が走る。その痛みからくらくらと目眩まで生じる始末。
そんな俺に休む暇も与えてくれるはずもなく、一斉に男達が襲いかかってくる。
反射的に体を起こし、襲いかかってくる男たちを迎え撃つ。しかし今の状況では上体を起こすのが精一杯。
足を駆使し相手の腹を蹴り上げ、そして相手の足を蹴り転ばせる。
そうしてなんとか暇を見て立ちあがろうとするが、それを許さないとでも言うように、再度飛び掛かってくる。
予想通り、俺一人に対し人数が多すぎた。俺がどんなに頑張っても一人倒すたびにまた一人起き上がり向かってくる。
未だに立ち上がることのできない俺にとうとう、馬乗りになってくる奴が出てくる。
退かそうと必死に手で払うが、相手も俺と同じ男のためビクともしない。そんな俺に相手はニヤリと不敵な笑みを一瞬覗かせ、手を振り上げる。
この至近距離で避け切ることもできず、左右の頬に鋭い衝撃が走る。そうすれば口の中には鉄の味が広がり、相手の拳や辺りの地面には血が飛び散る。
必死にその痛みに耐えていれば、相手は疲れてきたのか殴る速さが遅くなっていく。その隙を狙い、俺は殴り続けている男の胸を押し上げ、退かせる。そしてよろめいた隙を狙い、男の顔に狙いを定め拳を振るう。
それがかなり効いたのか顔を抑え地面へと倒れこみ呻き始める。
後は崎本を含め五人。一人の男がその倒れ込んでいる男を呆然と眺めているので、そいつに俺は狙いを定め、鳩尾に力を込めて蹴り上げる。
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