2120人が本棚に入れています
本棚に追加
/234ページ
僕は、松田からまた視線を資料へと戻す。そして話は終わりだ、というように、僕は立ち上がる。
「――もう、あいつ以外はお捨てになられたのでしょう?」
話を続けようと、松田は僕を見つめたまま言葉を続ける。仕方がないので僕は一度小さく息を吐き、松田を見据えた。
「それが、何?松田には関係ない事でしょ」
「…あいつが哀切すぎます」
僕は松田の言葉に少し驚く。最初はあんなに柳本のことを嫌っていたのに、今では自らも辛いという表情を浮かべていた。
「――…言わなかったんじゃない、言えなかったんだよ」
僕の言葉に、松田は意味がわからないという表情を僕に向ける。僕はそれを背に資料などを鞄に詰め込み、帰る支度を進める。
「…どういう意味でしょう?」
松田は怪訝な表情を浮かべ僕に問い続ける。
「そのまま、言葉の通りだよ」
僕は支度が終わり、帰るよと一言松田に言う。それを合図に松田は一度短く返事をし、自分の鞄を手に、僕の後に続き生徒会室を後にした。
それから松田は僕に、納得していないみたいだが、必要以上に聞いてくることはなかった。そして僕からも、何も話すことはなかった。
最初のコメントを投稿しよう!