2120人が本棚に入れています
本棚に追加
/234ページ
俺が躊躇いながら言葉を濁し、視線を先生の膨らんだお腹へと向けた。
その視線に気付いた先生は、うっすらと頬を染めて言った。
「そうなのよ…できちゃったの。赤ちゃん」
そう言う先生の顔はとても嬉しそうで。幸せそうだった。
「おめでとう」
俺がそう言うと、白い肌に笑窪を深く刻み笑いながら、ありがとうと言った。
「…お父さんになる人はどんな人?」
俺が不意に言った言葉で、先生は眉を顰めた。
何かまずい事でも言ったのだろうか?俺が少し焦り始めていると、先生はゆっくりと口を開いた。
「それが…、この子にはお父さんがいないのよ」
先生はお腹を擦りながら、寂しそうに答えた。
え…それはどういうことなのだろうか。俺は何と返したらよいか、頭をフル回転したが、良い言葉が思いつかなかった。
そんな俺を見て、先生はクスリと苦笑いを浮かべ、
「そんな顔しないで?…この子はちゃんと産むし、私一人だって大事に育てていこうと思っているから」
最初のコメントを投稿しよう!