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「あいつは――」
先輩が口を開いた瞬間その声は、背中の方から聞こえてくる声によって遮られた。
「――そこで何してるの?」
俺はその声に心臓が止まってしまったかと思った。振り向かなくてもわかる。
その声は先ほど耳元で聞いた、奴の声。
隣からゴクリと唾液を飲む音が聞こえる。先輩もこの声の主がわかったらしい。
ここの空間だけ、時間が止まったように感じる。
しかし、この空気の中一人だけこの危機感を感じていない奴がいた。
――そう、あの一年だ。
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