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聞き間違えるわけがない。
――上条の声。
そんな俺を余所に聞こえてくる甘い声。
――「んんっ…あっ、は…も、だめっ」
――「我慢できないなんて…君はダメなペットだね」
ズキン、ズキンと胸を抉られるような感覚。背中に嫌な汗が伝っていく。
胸を押えても鎮まることのない痛み。
ここの場から逃げ出したいのに、聞きたくないのに足が震えて動かない。
――「…っ、ふ…ぁあ!」
俺が立ち尽くしている間に男子生徒は達したようだ。俺はあまりの衝撃でうまく息ができない。
――「はぁ…はぁ…こんな所で、人にでも見られたらっ!」
――「ここにはあまり人は来ないから大丈夫だよ」
情事を終えた彼らが話す声。ヤバイ、早くここから離れないと。そう思うものの俺の足は動かない。
――「じゃあ、僕は戻るから。授業に遅れないように」
ザッザッとこちらに向かってくる足音が聞こえる。やばい、やばい。動け俺の足!
どうにか足に力を入れ動くようになった俺は、近くの茂みに身を潜めることができた。
間一髪といったところで、身を隠したのと同時に上条の姿が見えた。
俺は息を止め、茂みの隙間から上条の姿を見据える。
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