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上条はそのまま過ぎ去っていくと思っていたが、上条は俺が隠れている茂みの前で足を止めた。
大丈夫。あいつから俺の姿は見えていないはずだ――。
そう思ってはいるものの、上条は立ち止まったまま、辺りを見回していた。
背中に嫌な汗が伝い、上条に聞こえるのではないかというほどに心臓が煩いくらいに高鳴る。
しばらくすると、上条は校舎へと足を進めていった。俺は上条の足音が聞こえなくなるまで身を強張らせ耳を澄ませていた。
やがて足音も消え、静寂が訪れる。俺は止めていた息を思い切り吐き出し肩の力を抜く。
そうすれば先ほどの事が頭の中で蘇ってくる。
――「んんっ…あっ、は…も、だめっ」
甘く、辛そうな擦れた声。それに反応し甘く囁く
――「我慢できないなんて…君はダメなペットだね」
上条の声。俺だけじゃないんだ。上条の”ペット”は――。
しかしそんなこと俺には関係ない。上条はペットが俺だけとは言ってはいないし、俺と上条は恋人関係でもない。
ただの”主人とペット”でしかない。そう納得しようとしても俺の心はズキン、ズキン、と痛んだ。
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