お見合い

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「優奈は大丈夫かな?麻里さんはちゃんと世話をしてくれてるかな?」 今日は日曜日、智美と奈緒を駅前へ迎えに行く途中の車の助手席で加奈は心配そうに言った。 『麻里さん』は明日から大学に復帰する加奈の代わりに、優奈の面倒をみてくれる保育士の資格を持ったベビーシッターさんだ。 今日は智美と奈緒のお見合いなので、特別に麻里に優奈の世話を頼んだのだ。 「麻里さんなら大丈夫だよ。育児の経験が豊富なんだから」 ハンドルを握る有斗が笑顔で答える。 「…うん…でも昨日みたいに今日も優奈を連れて来ればよかった…」 加奈は浮かない顔で言う。 昨日は加奈の夏服を買いにブランド店へ行ったのだが、優奈も連れて行ってずっと有斗が抱いていたのだ。 「今日はホテルのレストランでお見合いだから、優奈のオムツの交換とかお乳をあげたりとかが出来ないよ?」 優しい声で言う有斗。 「うん、わかってはいるんだけど…」 相変わらず浮かない顔の加奈。 「加奈?もしかして麻里さんは関係なくて、優奈と離れてるのが寂しいんじゃないのかい?」 優しい声だが、からかう様に聞く有斗。 「ち、違うもん!…そんなこと…ない…もん」 加奈は慌てて否定するが、途中で言葉に勢いがなくなる。 「加奈、優奈がかわいいのはわかるけど、加奈は明日から大学へ行くんだから寂しさに慣れなきゃね」 そう言う有斗の声はとても優しい。 「…うん」 有斗の言葉に返事をした加奈だが声に元気はない。 (昼間優奈と離れて暮らす生活に慣れる時間が加奈には必要だな…) 助手席に座っている加奈をチラッと見て微笑むと、有斗は駅前に向かって車を走らせた。
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