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「カミソリでスカートを切られたり、ブラウスを口紅で汚されたり、ひどかったよ」
修一はうつむいて言った。
「それなのに僕らは何もしてやれなかったんだ」
賢悟が修一に代わって言う。
「彼女たちはよく耐えてくれて、僕と修一はそんな彼女たちを本当に愛おしいと思い始めてたんだ。それなのに…」
賢悟は悔しそうな顔で言う。
「それなのに?」
智美は賢悟の話をうながす。
智美の言葉に顔を上げた修一が賢悟に代わって話しだす。
「ある日、嫌がらせがあまりにひどくて『僕のせいでごめん』って謝ったら彼女が言ったんだ」
「なんて言われたんですか?」
奈緒が真剣な顔で修一に聞く。
「彼女は『こんな事で伊勢崎製薬の社長夫人になるのを諦めないわ。修一、私、大学をやめるから結婚して』っ言ったんだ」
修一は暗い顔をして言葉を続ける。
「僕が彼女の言葉に驚いていると『修一のご両親なら私たちが贅沢に暮らせる生活費ぐらい出してくれるでしょ?』って言われたよ」
「えっ?…それじゃあ…」
智美は驚いて言葉が最後まで言えない。
「そうなんだ…彼女は僕が好きなんじゃなくて伊勢崎製薬の社長夫人になりたかったんだ…」
寂しそうに答える修一。
「僕も彼女を慰めてる時に同じ様なことを言われたよ」
賢悟も寂しそうに言う。
「その時に僕らは思ったんだ。群がってきた女たちも彼女たちも金がめあての残酷な生き物なんだ…きっと全部の女がそうなんだと…」
悲痛な目をして言う修一。
「それから僕らは女なんか信用しないし話す気も無くなって、近寄ってくる女を無視してきたんだ」
賢悟も悲痛な目をして言う。
「そんな経験をしたら女嫌いになるのも無理はないです…同じ女の子として恥ずかしいです」
「女の子が苦手って訳じゃなかったのね。私も同じ女の子としてごめんなさい」
奈緒と智美は申し訳なさそうに謝った。
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