はじまり

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はじまり

「帰ろ・・・。」 ざぁざぁと強い雨にうたれて、ずぶ濡れのコウタは、ゆっくりと最終電車が待つ駅へと向かった。 ずぶ濡れで身体中が冷たくなってるのに、目から頬をつたい、生暖かいものが滴るのを感じると、自分自身に対しての、情けなさと悔しさが次々に溢れてきた。 ”キィ・・・、キィ・・・、キィ・・・。” 誰もいない真夜中の小学校の校内に、錆びた鎖の頼りないブランコの音だけが響いていた。 3月16日。今日は高校の卒業式だった。 昔から何かのイベントがあるにつれ、仲間が集まるタイチの家。 今日はいつも以上に大勢が集まり、どんちゃん騒ぎだ。 そんな中、コウタはエミを外へ連れ出した。 ”ここまでは作戦どうりや。” コウタの頭の中は、半分パニック状態で、自分の心臓の音が、エミにも聞こえてしまわないかと、一生懸命に平静さを保とうと必死だった。
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