出発

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出発

『暑ちぃ・・・。」 コウタは、クーラーと扇風機のスイッチを入れると、ベットに戻り倒れこんだ。 カーテンは閉切ったままで、薄暗い部屋に点けっぱなしのテレビの、青白い光がぼんやりと射している。 真夏日を伝える小さな声が流れていた。 ノストラダムスの大予言で、 ”今年人類滅亡か!!” と騒がれていた、1999年夏だった。 バックミラー越しに、後部座席の2人をチラチラと様子を伺いながら、エミの父はハンドルを握っていた。 コウタは隣に座るエミの手を、しっかりと握りしめていた。 エミは俯いたまま、ぎゅっとコウタの手を握り返している。 目的地までもうあと少し。 コウタの気持ちとは裏腹に、車は順調に走っている。 ふと、バックミラー越しにエミの父と目が合った。 エミの父は、ばつが悪そうに咳払いをし、ハンドルを握りなおした。 二人を乗せた車は、国道204号線をJR佐世保駅に向かって進んでいる。
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