出発

3/3
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
コウタの乗る、博多行き”特急かもめ”の発車がまもなくのアナウンスが構内に響き渡る。 「んじゃ、行ってくんね。着いたら電話するけ。」 エミは、車の中からずっと俯いたままだった。 コウタも話したいのだけど、言葉が出ないでいた。 いよいよ発車時刻になり、改札を通るコウタの背中から声が聞こえた。 エミの目からは、たくさんの涙が溢れていた。 コウタは初めてエミの涙を見た。 いつも、気丈で強いエミが、初めてコウタに見せた涙だった。 コウタはこの時、改めてエミの彼氏になれたんだと実感した。 「馬鹿コウタ!!ずっと一緒やけんね!!」 手には、お揃いの真っ白な携帯にぶら下がった、ストラップが揺れていた。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!