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すれ違い
Pruu、、、Pruuu、、、Pruuuu・・・。
しつこく鳴る携帯を、手に持ったまま、コウタはただぼんやりと眺めていた。
画面には、「バイト イシウチ」と表示されていた。
「コウタ!!カラオケいこうぜ。"ゆず"ハモろ~や。」
「今日バイトやけ、ごめんっ。また今度な!!」
コウタは、学校の階段を、我先に駆け降り、駐輪場を目指した。
愛車"はじめ君"(ただのママチャリ)に跨ると、JR博多駅の中のファーストフード店へと急いだ。
「こらっ、コウタ遅ぇよ。」
着いて早々、低音の太い怒鳴り声。
コウタは、頭を思いっきり叩かれた。
長身でガッチリとした体格で、この店の影のボス。
通称"イシさん"。
目鼻立ちがキリッとしていて、モデルにでもなれそうな女性だが、口の悪さと、腕っぷしの強さは半端じゃない。
みんなからは、兄貴と慕われていた。
この店にアルバイトに来て3週間。
コウタは、ようやく店の雰囲気と仕事内容に慣れてきた。
「シュリンプ×5、テリヤキ×5、チーズ×3プリーズ。」
「オッケーでーす。」
元々、小さい頃から炊事場に立っていたコウタは、器用にハンバーガーを作っていく。
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