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リュウはパチリと目をさました。
随分と懐かしい夢を見たなと欠伸をしながら考えた。
思えばジェイはずっと努力を重ねていた。
どんな賞を貰っても決して自分を過大評価しない男だった。
リュウはジェイのそんな所を尊敬していた。
しかしその思いは何時からか嫉妬に押しつぶされ、彼に最悪な最後を与えたのだと悟った。
彼と過ごした日々はリュウがまだ十四の時からで、もう十年経つ。
つまりリュウはもう二十四になるのだ。
いいかげん師の影から抜け出さなければと思いつつも、幸せだった日々を捨てることが未だできないでいた。
ボーンと時間を知らせる鐘が鳴る。
行かなくては。
身支度を整え向かう先はミウの部屋。
今日は一緒に絵を描く約束をしているのだ。
スケッチブックと鉛筆を持ち、彼女の部屋へ向かう。
そしてコンコンコンと三回ノックする。
これはミウとの内緒の合図なのだ。
「待ってた。描こう?」
「ああ、いいぞ」
毎日、毎日ひたすら変な生物を描きまくった。
目が一つだったり、角が生えていたり、ドロドロしていそうな生物だったり。
とにかく描いた。
このミウとの一時はリュウにとって掛け替えのないものになっていた。
今までは、とにかく評価される様な立派であり完璧な絵を描かなくては、という鎖で繋がれていたような気がする。
しかしミウとなら自由に描ける。
どんな人がどんな絵を求めているかなんて考えなくても良くなったのだ。
周りの奴らはリュウを負け犬と呼んだ。その事には胸を痛めたが、自分を求めてくれている誰かが居るという事はこんなにも嬉しい。
ずっとこんな日々が続けばいいと言えば
「私も」
と嬉しそうに笑うミウがリュウは妹みたいで好きだった。
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