レイミの怪物

6/11
前へ
/114ページ
次へ
世間の事は何一つ知らない子達だったが、生きていくのに必要な知恵は、十二分に備えていた。 衣食住の管理、薬草や獣に詳しかった。 レイミと子供達と、夕食を共にして、宛がわれた部屋で休息を取る。 年長の子供達は、一人で生きていける歳になれば、この家から自立するのが慣わしらしい。 「まるで、孤児院だな」 寝台の上で、一人呟く。 朝になると、小さな子供達が起こしに来てくれた。 「おっきろ~!」 「ぐえっ」 …寝て油断している上に、飛び乗られた。 しかも、俺の上でバタバタと暴れだす。 容赦ねぇ子供達だ…。 「ねぇ、旅人さん。この子達を大きな町に連れていってくれないかしら」 そう言って、レイミは笑う。 「え!何で?」 「やだよぅ。此処にいる~!」 子供達は今にも泣き出しそうなくらいに、動揺している。 「此処じゃ何も出来ないでしょう?」 レイミが苦笑する。 「他の誰とも知り合えないし、もっと広い世界を見てほしいの」 優しく微笑むレイミは、まるで母親のようだった。
/114ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加