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世間の事は何一つ知らない子達だったが、生きていくのに必要な知恵は、十二分に備えていた。
衣食住の管理、薬草や獣に詳しかった。
レイミと子供達と、夕食を共にして、宛がわれた部屋で休息を取る。
年長の子供達は、一人で生きていける歳になれば、この家から自立するのが慣わしらしい。
「まるで、孤児院だな」
寝台の上で、一人呟く。
朝になると、小さな子供達が起こしに来てくれた。
「おっきろ~!」
「ぐえっ」
…寝て油断している上に、飛び乗られた。
しかも、俺の上でバタバタと暴れだす。
容赦ねぇ子供達だ…。
「ねぇ、旅人さん。この子達を大きな町に連れていってくれないかしら」
そう言って、レイミは笑う。
「え!何で?」
「やだよぅ。此処にいる~!」
子供達は今にも泣き出しそうなくらいに、動揺している。
「此処じゃ何も出来ないでしょう?」
レイミが苦笑する。
「他の誰とも知り合えないし、もっと広い世界を見てほしいの」
優しく微笑むレイミは、まるで母親のようだった。
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