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ほんの半時間前まで、俺は普通の道にいて、普通に塾から家に向かっていた。
母さんにあと10分ぐらいで家に着く、という趣旨のメールを送って、しばらくノロノロと歩いていたら
……そうだ。確か突然眩暈に襲われて――
「うわっ!」
考え事をしていたせいだろうか。
足がもつれて、俺の体が前のめりになり
「ぶげ!!」
……派手にそして無様に顔面から転んでしまった。
痛え。超痛え。
その事実がこれが夢ではなく現実だということを、如実に物語っている。
急いで立ち上がろうとするが、疲労が最早ピークに達している体は、簡単には起き上がってくれない。
「ぶおおおおおおおおおお!!」
獲物が動けなくなったことに気が付いたのだろう。後方から歓喜の雄叫びが聞こえてくる。
動け。動け動け動け動けぇ!!
アイツが来る前に立ち上がって、もう一度逃げるんだ。でないとお前の人生はここで終わるんだぞ!
そう自分に言い聞かせて、四肢に力を込める。否、込めようとする。
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