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「(母親が嫌いな訳じゃないのに―――)」
凛は通学最中に何時も思っていた。
話しかけられ問いに応えようにも、只返事を返せば円滑に回る事にも、凛は口を塞ぐ様になっていた。
「何時からだっけな―――?」
自転車を漕ぎながら凛はぼんやりと回想する。
「ああ、多分…中学2年あたりだっけか…」
父親はその頃から長期出張に出ていて、たまの休みに帰宅する位だった。
しかし凛は受験を終えた辺りから家をしばしば空けるようになる。
たまに会う父親にも母親にも不満があるわけじゃなかった。
なのに、親を目の前にすると自分の中で言い難い感情が沸き上がる。
まるで黒い霧に覆われて、目の前が何も見えなくなる様な―――。その時に浮かび上がる何とも言えない感情。
凛はその得体の知れない感情が沸き上がる度に、口数を減らして行った。
まるで大きなモンスターにとりつかれた様に、毎回胸をかきむしりたくなった。
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