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某県某所に位置する咲良市。
そこは都会と呼ぶには小さく、田舎と呼ぶには大きすぎる。そんな街だった。
その街を一望出来る丘の上に立つ一本松の下、二人の幼い男女が夕焼けに染まる空を見上げていた。
――きれいだね。
少女がそう漏らすと、少年も笑顔で肯定する。
夕陽は街を優しく包み込み、一日の終わりを知らせる。
二人は綺麗な夕陽が好きで、別れを知らせる夕陽が嫌いだった。
――そろそろかえろっか。
少年が立ち上がって少女に手を差し延べる。
が、少女は手を取ろうとはせず、しばらくして呟いた。
――ずっと……いっしょにいれたらいいのにな。
少女はそこまで言って、不意に母との会話を思い出す。
――おかあさん、けっこんってなに?
――結婚するとね、ず~っと、大好きな人と居られるのよ。
――へぇ~!じゃあ、わたしけっこんしたい!
――ふふっ。あなたに大切な人が出来れば、何時か出来るわよ。
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