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――……ねぇ、ゆうきくん。
少年の名前を呼ぶ。
少年はどうしたの?と聞き返して来る。
――わたしね、ゆうきくんのこと、だいすきだよ。
――ぼくも、のどかちゃんがすきだよ!
少年も笑顔でそう言う。
釣られて少女も笑顔になる。
――じゃあさ、わたしとけっこんしてくれる?
――けっこんってなに?
少年は?マークを浮かべて尋ねてくる。
少女はそれに笑顔で答えた。
――けっこんするとね、だいすきなひととず~っといっしょにいられるんだって。わたし、ゆうきくんとず~っといっしょにいたい!
――うん!ぼくものどかちゃんとず~っといっしょにいたいよ!
その言葉に少女の笑顔が弾けた。
夕焼けに照らされた少女の笑顔は何よりも輝いていた。
――じゃあ、ゆうきくん。め、とじて?
――うん。わかった。
少年が目を閉じたのを確認すると、少女は少年の頬に柔らかなそれを軽く当てて離す。
少年は何をされたのかわかっておらず、おどおどするだけだ。
少女も夕焼けで隠れてはいるが、顔が赤くなっていた。
恥ずかしさを隠す様に少年の手を取ると、走り出す。
――かえろっ!ゆうきくん!
――まってよ、のどかちゃん!
これはとある少女の大切な思い出の一ページ。
そして、季節は幾度となく巡り、二人は高校二年の春を迎えた。
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