『departmental lovers.』

5/205
前へ
/205ページ
次へ
   何かを確かめているのか。  じっくりと時間を掛けて這わされた指が、突然勢い良く彼女の内股を押し広げた。 「やぁ……だっ……」  抗う吐息には不可抗力の熱を浮かべて。  意識とは裏腹に、反対の内股さえ自ずと見せ付けんばかりに外向きに開いては、奴の顔が下って来るのを待っていた。  指が、舌がそこで踊り始めるよりずっと早く、それそのものが心臓にでもなったみたいに激しく脈を打ち、昨夜と同じ訪問者を言葉も無く待ち焦がれているのだ。 「……お迎えに上がりましたよ、“姫”」  そう言って、奴は不敵に口元を歪ませる。  底の見えない泉に滴る、快楽と云う名の毒を含んだ蜜を拭うと、あざとく己が口で啜った。  拒む力ですら一緒に飲み込まれたかと思う程、香奈は身体を開いたままで自らの顔を両手で覆った。  ――……なんで、あたしは感じてるの?  なんで、あたしはこの人と此処に居るの?  なんで……。  真冬特有の悪意の無い柔らかな太陽は、既に街全体を照らしていた。  半開きになったカーテンから室内のごく一部にだけ強烈に差し込んでは、立ち上る蜜戯の熱をも当たり前のものの様に白日に晒してしまう。  律動される度に押し殺していた筈の喘ぎを口の端に漏らして、香奈は何時しか奴の背中に縋った。  堪え性の無い子供の様に、更なる律動とそれに伴う快楽の波を強請(ねだ)って。  
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!

70人が本棚に入れています
本棚に追加