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海、私の双子の兄。
いつのまにか隣に現れた彼は張り出されたクラスわけの紙を見つめながら、ニッコリと微笑んでいる。
『な…なんで?どうしてよ?どうしてここにいるの?』
高ぶる感情が声を震わして今にも泣きそうな自分を必死に押さえ込む。目が熱く、潤んでくる。感情が高ぶるとすぐ泣いてしまう私の悪い癖だ。
…嫌だ、泣きたくなんかない。泣いたって彼を喜ばすだけだ。そんなんじゃいつまでたっても抜け出せやしない。
ほら、そんな私を見て彼が心底嬉しそうに目を細めてる。
『だって“一緒”じゃないと、ね?』
『そ、そんなこと聞いて、るんじゃない…!』
ポロッと押さえきれなかった涙が零れる。
『ああ…、駄目だよ琉伊。もうすぐ入学式はじまるのに。』
『わ、私、私は怒ってるの!』
慰めようと伸びた彼の手をパシリと叩き、顔を逸らす。このままじゃまた彼のペースに巻き込まれる。
私が張り上げた声に周囲の視線が集まり出す。
そんなことを気にする様子もなく私を見つめる彼はヤレヤレとワガママを言う子供をあやすようにポンポンと頭をなでる。
『はいはい、わかってるよ。びっくりしたんだよね?』
わかってない。
あなたは何もわかってない。
優しくて残酷な彼の手を振り払い、私は人混みをかきわけてその場から立ち去った。
後ろから私の名を呼ぶ彼の声がする。
もう追ってこないで、
お願い。
ずっと一緒なんて無理なんだよ、わかってるでしょ?
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