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『ねぇ、流伊お腹にいるときのこと覚えてる?』
幼い頃の海は二人きりになるとよくこんなことを聞いてきた。
何のことを言っているかもよくわからずただ首をふる馬鹿で幼い私。
普通ならぼんやりと靄がかかるような記憶さえ、海はハッキリと覚えているらしい。
その類いまれぬ才能は学力にも反映し、彼の成績はいつもトップをキープしていた。
生まれながらに何もかも持ち合わせた兄がいることを私は妬ましく思いながらも、誇らしかった。
『いいだんよ、別に。流伊、ただ一緒にいてくれたらそれでいい』
それだけでいいのだと呟く彼はとても寂しそうだった。
何もかも持っているはずなのに
彼はいつも寂しそうだった
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