ふたり

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『なにをそんなに拗ねてるの?』 クスクスと笑う彼が“ほら、次は体だよ”と私の肩に優しく触れる。 『…体くらい自分で洗う。触んないで』 その手を振り払い、私は吐き捨てた。 やれやれ、と呆れたように首を軽くふった海。 その顔に傷ついた様子がないことにほんの少しイラつく自分がいる。 『別にいいけど、強くこすったりしたら駄目だよ。琉伊の肌せっかく綺麗なんだから』 彼は私の体をまるで自分のもののように、いや、それ以上に扱う。 大事にしているといえば聞こえはいいが、その扱いはまるで人形だ。 幼い子が自分のお気に入りの人形の世話をやき、大事にしまいこみ、閉じ込めてしまうような。 『………もうやだ』 ポツリと零れた本音。 『………ん?』 あまりの小ささに耳を傾ける海を私は鋭く睨みつける。 『…………もう一緒に入るのやめたい』 『…またそれ?』 海はハァと心底めんどくさそうにため息をこぼした。
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