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僕に弟が生まれたのは、紅葉が始まる頃だった。
鹿沼のおばさん家で飼っているワン子がお見合いをした。
相手は血統書付きの、チャンピオン犬らしい。
まぁワン子自身も、ブリーダーが育てた血統書付きではあるけれど。
親父の気まぐれで、栃木までドライブに行った日、これまた気まぐれで、生まれて間もないワン子の子を譲ってもらったのだ。
名前は僕が付けた。
――マルス
我ながらハイソな名前だと思う。
ワン子の息子だなんて到底思えないくらい、実にかっこいい。
だって、血統書付きのボルゾイがワン子みたいな名前じゃ可哀想でしょう?
マルスはとりわけママに良くなついて、忙しい僕といい加減な親父には、よく吠える。
なんていうか、半年足らずで生意気な弟に仕上がってしまったもんだ。
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