寒い朝

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その後は、あまり覚えてない。 友人も気まぐれらしく、適当にあいづち打って入部の有無を返答しなかったし、わたしはわたしで雪香先輩を見入ってしまっていた。 しかしなけなしの勇気をしぼって、他の部員からお名前を聞き出す事に成功した。 藤代雪香さんという、お名前を。 そこまで。そこでお終いだった。おしまいになるはずだった。 後日、雪香先輩はわたし達のクラスにやって来たのだ。 もちろんそれは、わたしの友人から色良い返事をもらうためだ。 友人は雪香先輩の、入部の誘いに応じたのだ。 バレー部のエース直々の勧誘に気をよくしたし、部内の雰囲気が良かったからだそうだ。 わたしが脳天気だけど、らしいねと言うと抗議の声を上げていたけど仕方ない事実なのだから。笑ってはしまったけど。 そのやり取りを雪香先輩も傍目で見ており、それから…という、なんのドラマの欠片もない出会いだった。
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