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『貴様ハ……ッ』
「愚かな式神め。切られたくなければ主の元へ帰れ」
『我ハ諦メヌ!!』
禍々しい風が吹き、鬼が姿を眩ませると、人影は刀を鞘に戻し、少女を揺すった。
気絶していた少女は、うっすらと瞳を開く。
「娘、大丈夫か?」
「……なた……は……?」
呟きにもならない言葉の後、少女の意識はまた失われる。
くたっと力を無くす体を抱き上げ、人影は歩き出した。
「綱さぁ……わっ!」
角から少年が飛び出し、人影と少女を見て足を止めた。
「金時、殿に知らせを」
「何ですか、その子。変な格好」
「俺が知る訳ないだろ。急げ!」
「はいはい!殿には明日、お屋敷に向かうよう伝えます」
「頼む」
「たくもう。僕には犬や猫を拾うなと五月蠅いくせに」
ぶちぶち文句を並べながら、少年は暗闇へ走り去る。
それを見送った人影は、腕の中の少女を見て歩き出した。
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