一話 桜

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「え、あの、でもっ」 「断れ!」 「まぁまぁ。なるだろう?」 この威圧感は何とかならないのか。 半泣きで晴明を頼ると、頭を悩ませていた。 「……頼光様。桜の君の意思を聞いて下さい」 「む」 「……あの。私」 「待て待て。聞いてくれんか。妻も娶らず武にのみ生きる喜びを持つこやつが、娘を屋敷に住まわすとなれば、いらん噂が立つ」 「だったらこいつを住まわせなければいいでしょ」 「いいや。すでに決めた事は覆せん。であるから、桜の君はここに住む理由が必要なのだ」 「……それでしたら、何も妻ではなく女房としていさせればよろしいかと」 「それではこやつが守る理由が無いだろう。今まで家臣を命懸けで守っていれば良いのだが?」 詰まった青年が、苑衣以上に困り果てた目で晴明を見る。 こうなれば頼りになるのは彼しかいない。 「頼光様、それでは婚約者とするのはいかがでしょう」 「「晴明様!?」」 「これくらい我慢して下さい」 あくまで婚約だから。 自分に言い聞かせる二人に、晴明は息を吐いた。 「ならばそれで良しとするか。何かつまらんが」 「自分の道楽に人を使わないで下さい」 晴明の一言にも、頼光は聞かなかったふりをした。 .
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