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「晴明殿、どうだ」
牛車に乗り込みながら、頼光は晴明を見やる。
後ろの青年が顔を引き締めた。
「恐らく、狙われているのは間違いないでしょう」
「……誰か分かるか」
「赤鬼を使役しているとすれば、陰陽師でしょうな」
実力が物を言う組織だ。
家など関係無く、実力があればそれなりの地位に昇れる陰陽寮内には、何人か式神を使役している者はいる。
その最たる者が安倍晴明。
狐の子と蔑まれながらも、真っ直ぐ育ち、今では一条戻り橋の下に式神を控えさせている。
理由としては、妻が怖がるからだ。
「式を飛ばして調べてみましょう。……ただ」
「ああ。話を聞く限り、使役しきれていないな」
「恐らく、頼光様に対抗した者でしょう」
陰陽師ではないが、頼光とその部下四人は鬼退治ができる程の腕を持っている。
それを妬む者がいてもおかしくないだろう。
「とにかく、桜の君が安心できるよう、迅速に片付けよう」
ただでさえ違う世界に来て、不安になっているだろう。
鬼に狙われてるとなれば、彼女の為にならない。
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