一話 桜

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******* 「晴明殿、どうだ」 牛車に乗り込みながら、頼光は晴明を見やる。 後ろの青年が顔を引き締めた。 「恐らく、狙われているのは間違いないでしょう」 「……誰か分かるか」 「赤鬼を使役しているとすれば、陰陽師でしょうな」 実力が物を言う組織だ。 家など関係無く、実力があればそれなりの地位に昇れる陰陽寮内には、何人か式神を使役している者はいる。 その最たる者が安倍晴明。 狐の子と蔑まれながらも、真っ直ぐ育ち、今では一条戻り橋の下に式神を控えさせている。 理由としては、妻が怖がるからだ。 「式を飛ばして調べてみましょう。……ただ」 「ああ。話を聞く限り、使役しきれていないな」 「恐らく、頼光様に対抗した者でしょう」 陰陽師ではないが、頼光とその部下四人は鬼退治ができる程の腕を持っている。 それを妬む者がいてもおかしくないだろう。 「とにかく、桜の君が安心できるよう、迅速に片付けよう」 ただでさえ違う世界に来て、不安になっているだろう。 鬼に狙われてるとなれば、彼女の為にならない。 ******* .
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