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頼光達が参内をした後、比較的年が近い女房が二人来て、苑衣を着替えさせた。
ぐったりしている苑衣に、女房の一人・空木(うつぎ)が水を差し出した。
「お疲れ様です」
「……いえ」
「桜の君様は、殿の許婚なのでしょうか」
「まぁ、そうなっています」
会って間もないのに、何故こうなっているのか。
「ついに殿も」
良かったと胸を撫で下ろす空木に、体制だけだとは言えなくなってしまった。
話を聞けば、空木は十四だと言った。
この屋敷に仕える女房の中でも、最年少だとか。
一緒に着替えを手伝ってくれた女房は百未(もみ)といい、十六らしい。
「殿の乳母の徳芳(ありよし)様は気難しくて。私、嫌いです」
「殿……えっと、綱様のお母様は?」
「奥様は都にはおりません。殿のお郷が武蔵ですのでそちらにおります」
武蔵とは今は東京だったか。
離れて暮らしてるのは、当たり前なのかもしれない。
そんな事を考えれば、両親を思い出して胸が痛んだ。
親友の今日子も心配してるだろう。
考え込む苑衣に、空木は首を傾げた。
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