二話 四天王

3/11
前へ
/384ページ
次へ
空木達にしてみれば、苑衣の事を聞きたい。 昨夜、毎夜の事ながら主が夜警に出かけた帰り、奇妙な格好をした少女を抱えていたのだから。 今は主の命により、自分達が袿姿にしたが、明るい色の髪も短いし眉もある。 容姿はいいが、姫君には見えない。 果たして、主とどういう面識があって許婚になったのだろう。 「……あの、桜の君様。失礼とは存じますが、あなた様はどこの姫君なのでしょうか」 「え。あー。私、別に姫君じゃないです」 「でしたら、何処で殿と」 「えっとぉ」 答えるのに悩む。 苑衣のそんな姿を見ていた空木は、じっと答えを待った。 「……あの。綱様は、昔、私を鬼から助けてくれたんです」 「それが出会いですか」 「はい。……それで、頼光様の計らいで」 間違ってはいない。 「左様ですか。でしたら、昨夜も助けられたのですか」 「え、ええ。私には親がいなくて、度々、綱様が様子を見に来て下さったんです。昨夜もそうでしたが、たまたま鬼が私を襲っていて」 即興の作り話の後、ワザと大袈裟に震えて袖を目許に押しつける。 中学から続けている演劇の部活が、役に立つ日が来るとは。 .
/384ページ

最初のコメントを投稿しよう!

309人が本棚に入れています
本棚に追加