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百年、千年……それより遠い先の未来でも、待っているから……。
だから、また見つけてね?
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遥か昔、その地には天照大神の子孫である者が治める国があった。
科学など無い時代。
自然現象は全て見えざる者の力であり、神や妖を信じていた。
そんな時代の花の都、平安京――。
雅と言われ貴族が謳歌していたその地は、夜になれば妖・妖怪が跋扈していた。
その為、日が暮れれば碁盤目状に作られた道に人気は無くなる。
何時の時代も、人間は闇を恐れる者だ。
そんな暗闇を、奇妙な格好をした少女が走っていた。
明るい髪は背中まで長さがあり、丈が短い裾からは生足が伸びている。
この時代ではまず有り得ないその格好は、昼間であれば誰もが目に入れてしまうだろう。
走る少女は、何度か後ろを気にして振り返る。
誰もいる筈が無い暗闇。
しかし、その中から、赤い鬼が現れ少女を追っていた。
走り回る少女を、いたぶるように追いかけながら、赤鬼はニタニタと下卑た笑いを浮かべている。
不意に、少女の足が縺れて転倒した。
慌てて振り返る視線の先には、もう追いついた鬼がいる。
「……ひっ」
太い腕が少女の首を掴む。
力が入り、少女は足掻いた。
「……だ……ぃやだぁ」
そのか弱い悲鳴ですら気持ち良さそうに、赤鬼は恍惚とした笑みになる。
が、その直後――。
白刃の光が走り、赤鬼は慌てて少女を離した。
力無く倒れた少女を片腕で抱き留め、現れた人影は刀を赤鬼に向けた。
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