二話 四天王

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「僕なんて綱さんに比べたらまだまだです。綱さんは四天王の筆頭ですよ」 あの年齢詐偽紛いの男が。 「その奥様になられる方をお守りできるなんて」 光栄ですと可愛らしく言う金時に、苑衣は頬を引く付かせた。 綱を思い出し、嫌な予感がする。 「……あの、因みに何歳でしょう」 「え。ああ、二十二です」 「少年じゃねぇ」 思わず呟いてしまう。 なんだ、この年齢詐偽集団は。 「……二十代……ですか。またまた因みに奥さんは」 苑衣の質問に、空木が身を乗り出す。 「え……ううん。僕も独り身です。まだ家庭を持てる程、暮らしが安定して無くて」 ここ最近、京に来たばかりらしい。 それでも昇殿を許された身の頼光に仕えるのだし、それなりに収入があるらしい。 それでもまだ時期では無いと決めてるのは、何か理由がありそうだ。 「金時様は参内をしなくてよろしいのですか?」 「ええ。今日は物忌という事で休みを貰いました」 物忌とは、運気がよろしくないから休み、室内に籠っていなくてはならない。 それがここにいるという事は、嘘か。 苑衣の視線に、金時は赤くなった。 「物忌など、気力で運気も跳ね除けます!」 「何時も金時様はそう言って本来の物忌を休まないのです」 怒ったような空木に、金時が所在無さ気に視線を彷徨わせた。 .
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