二話 四天王

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その後も取り留めない話をした後、日が暮れかけ、綱が帰って来た。 お客様を引き連れて。 「おう、金時!お前、物忌はどうしたよ」 豪快に笑いながら、長身の男が入って来た。 顎に切り傷がある。 「季武さん!」 「この姫さんが綱の許婚か」 チラッと、男は空木を見た。 空木が気付いて、頭を下げると退室した。 男は胡座を掻いてニヤリと笑った。 「話は殿から聞いたぜ。時空を越えたお姫様?」 「何の事ですか?」 首を傾げた金時に、男は苦笑した。 「金時は後で聞いて来い」 「はぁい」 「じゃ改まって。俺は卜部季武(うらべすえたか)だ」 「……苑衣と申します」 頭を下げた苑衣に、季武と金時も頭を下げた。 卜部季武とは四天王の一人。 神楽や土蜘蛛・子持山姥・滝夜叉姫といった話に登場する事で有名だ。 「……後、えっと碓井貞光……様は」 「何だ。知ってんのか。あいつは綱の所」 なら後で会えるだろう。 それにしても、随分と豪快な男だと、苑衣は季武をまじまじと見た。 参内して来たからか、黒い直衣を着ていて、烏帽子を外した茶けた髪はざんばらだ。 年は絶対に二十代だろう。 「あの。何歳でしょう」 「お?三十」 惜しいが何も悔しくない。 反応が微妙になってしまった。 .
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