二話 四天王

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「盛り上がってる所悪いが、いいか」 「「綱(さん)」」 季武と金時の視線の先には、すでに烏帽子を取っている綱と、眠気眼の青年がいた。 彼が最後の一人、碓井貞光だろう。 童話では木こりに化け、金時を頼光に紹介している。 「お前ら、遊びに来てるんじゃないし、さっさと帰れ」 「んな事言っていいのかぁ?今夜はお前に変わって夜警に行ってやるんだぜ?」 「別に、嫌ならいい。俺だって行きたくない訳じゃない」 視線が苑衣に集まる。 恐らく、用事があるが苑衣がいるから今日はお休みするらしい。 気付いた苑衣は、顔の前で両手を振った。 「お気遣いなく!私、ちゃんとお留守番してますし」 「健気でいいねぇ」 「桜の君。今夜くらい綱に付いていてもらえ」 抑揚の乏しい声に、苑衣は貞光を見た。 昨夜とは違い、一人になれば寂しい思いをするのを知っているようだ。 そうならないよう気を遣ってくれているのだろう。 俯いた苑衣は、呼吸を整えて笑顔を作って一同を見た。 「本当にお気遣いなく。こう見えても図太いですから」 .
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