二話 四天王

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「そういえば、晴明様の式神が憑いてるらしいな」 「みたいです」 一日中側にいるらしいが、気配も無いので分からない。 綱は苑衣の斜め後ろ辺りを見て、無言で頷く。 何かいるのかと振り返るが、誰もいない。 「……分かった。殿にはそう言っておこう」 声に出した綱を見れば、気まずそうに顔を曇らせる。 もしかしなくても、綱には視えているのだろう。 しかも、それを悪い事のように思っている。 「……綱様、何も隠す必要はありませんよ」 真っ正面から綱を見て、笑い掛ける。 「視えるのも個性ですもの」 「気味悪くないのか」 「何故ですか?」 現代ならそれを売りにしてる者もいる。 時代の違いでは、捉え方は違うかもしれないが、少なくとも苑衣は普通と思う。 「綱様は、普通ですよ」 不思議そうな綱は、視線を逸らした。 「変な奴」 「失礼ですね」 そう返しながら、苑衣は笑顔を浮かべる。 春の短い日は沈もうとしていた。 .
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