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「そういえば、晴明様の式神が憑いてるらしいな」
「みたいです」
一日中側にいるらしいが、気配も無いので分からない。
綱は苑衣の斜め後ろ辺りを見て、無言で頷く。
何かいるのかと振り返るが、誰もいない。
「……分かった。殿にはそう言っておこう」
声に出した綱を見れば、気まずそうに顔を曇らせる。
もしかしなくても、綱には視えているのだろう。
しかも、それを悪い事のように思っている。
「……綱様、何も隠す必要はありませんよ」
真っ正面から綱を見て、笑い掛ける。
「視えるのも個性ですもの」
「気味悪くないのか」
「何故ですか?」
現代ならそれを売りにしてる者もいる。
時代の違いでは、捉え方は違うかもしれないが、少なくとも苑衣は普通と思う。
「綱様は、普通ですよ」
不思議そうな綱は、視線を逸らした。
「変な奴」
「失礼ですね」
そう返しながら、苑衣は笑顔を浮かべる。
春の短い日は沈もうとしていた。
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